切幡山の中腹、標高155mに境内がある。 国指定重要文化財である大塔からの眺望はすばらしく、眼下には吉野川がゆったりと流れ、前方には四国山脈の雄大な山々が連なる。 古く、この山麓に機を織る乙女がいた。 ここで修法していた弘法大師は、結願の7日目、綻びた僧衣を繕うために布切れを所望された。 乙女は、織りかけていた布を惜しげもなく切って差し出した。 大師は、この厚意にたいへん感動し、「何か望みはないか」と尋ねた。 乙女は、「父は都で薬子の変に関係して島流しとなり、母は身ごもっていたが、男の子が産まれればその子も咎を受ける。 どうか女の子が産まれるようにと、清水の観音様に祈願し、やがてこの地に来て産まれたのが私です」といい、「亡き父母に代わり、観音様をつくってお祀りし、わたしも仏門に入って精進したい」と願いを告白した。 (写真は、切幡寺「本堂」… 2012.10.6)